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善きデザイン

僕のデザインの目指す方向のひとつが「普遍性」です。普遍的な善いデザイン。とてもあいまいで多様な考え方があると思いますが、僕自身がユーザーの立場に立って考えるときにいくつかの条件を(自分自身が)求めていることに気付きました。

1:機能性
2:永続性
3:審美性

この三つの条件のバランスの取れたもの、いやいやそのバランスにもいろいろなものがあるのですが、中でも普遍性の高いほうへとバランスがとれたものが僕は好きなのだな、と気付きました。

それは、普通であることの美、というものがあるのではないか、という盲目的な希望です。端正で、静かで、安定してて、素材や構造に素直で、機能的で、、様々な条件がオートマチックに鍛え上げた普通の美。それこそ道具の美学なのでないでしょうか。

ありふれた道具に宿る美学については、僕の大学時代の師であるGKの栄久庵先生が追求されていました。
僕は優秀な生徒ではありませんでしたが、普通の道具の美学にはなぜかとても魅かれていました。
そして今もとても魅かれつづけてています。

僕はたくさんの時計をデザインしましたが、7年前に初めてデザインした時計は、極めて普通の美しさがあると自負しています。道具としての基本に忠実な普通の時計。見やすく、飽きが来にくく、本物の素材(プライウッド)を使用した美しい時計です。値段も頑張って安くして、多くの人に使ってもらえるようにしました。GKデザインのキッコーマンの醤油差しのような時計を目指したのは事実ですが、素朴で機能的なデザインは、僕の尊敬するアアルトの建築や家具からの思想的な影響も強かったのだと思います。

普通美は、僕がTL社のデザインを引き受けて取り組んだ最初の仕事であり、その後のTL社のデザインの基本方針へと(勝手に)据えてしまいました。時を計る道具として、もっとも美しいもの。それは誠実な素材と構造に基づいた、シンプルで機能的なモダンデザインであってほしい。TL社はもっとも普通で美しい時計を造るデザインメーカーになってほしい。

その誠実な普通の美しさが、ユーザーの方々の幸せの片隅に寄り添い、生活の供として長い年月を生き抜いてくれることを願っています。

追記
そうそう、ここに登場した僕の最初の時計は、アアルトのARTECにて販売されました。尊敬する巨匠の家具と同じ場所に置かれることは、ただそれだけでとても嬉しかったです。また、この兄弟機はMoMAへ向けて太平洋を渡っているところです。


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